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青緑の料紙に金の揉み箔がキラキラと上品な輝きを放つ平安時代の装飾経です。巻首の品題右下に「泉福寺常住」との朱文長方印があることと、焼痕があることから『泉福寺焼経』とよばれます。
「経典は『華厳経』であり、漉き染めの藍紙に金の揉み箔が散らされ、界線も金界で引かれた優美な美しさにあふれた経巻・・書写年代は、その筆致から平安時代12世紀前半かとみられるが・・藍紙を用いた書跡自体が少ない中にあって実に貴重な存在である」
『植村和堂収集書画』根津美術館
本断簡は『華厳経』の「入法界品第三十四之十」からで、以下入法界品について引用です。
「菩薩の修行の歴程を一人の善財童子に実修実証せしめたもので・・善財童子が文殊菩薩の導きによって一念発起し、五十三人の善知識を歴訪して菩薩の行法を実修し、最後に普賢菩薩の教えを受けて法界に証入することを明かしている」
『仏教経典の世界』
藍紙の料紙、ピンと張った美しい金界、たっぷり撒かれた揉箔、上下を彩る赤茶の焦げ跡、そこに墨痕あざやかな経文は一文字も焼けることなく残りました。また本断簡は、裏打ちにも泉福寺焼経の裏を剥がした料紙を利用した手の込んだものです。表装は焦げ跡を意識して、やや明るめの茶から濃茶でまとめました。平安時代の香りをお楽しみいただけます。
太巻 軸:110 x 36.5 cm
*中央画像一番下は、揉み箔のかがやきをご覧いただくため、ライトを当てて撮影したものです。
どうもありがとうございます。
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