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宇治川のほとり平等院の、国宝の梵鐘の、天人部分の拓本です。
まくりの状態で入手したものを、裏打ち、額装いたしました。
「銘の神護寺、声(ね)の園城寺、姿の平等院と呼ばれて、これらは天下の三名鐘にあげられ・・平等院の梵鐘は総高2メートルにもおよぶ巨鐘でありながら、笠から口縁へと至る線が、穏やかな裾広がりとなって、美しいカーヴを描き・・もう一つの大きな特徴は、全身にくまなく唐草や天人等の紋様が施されていることである」(*)
本拓は中央の天人の箇所、蓮華を持つものと、華籠(けご)を捧げるもの二種のうち、華籠を持つ方です。よって額の大きさ(43.5 x 55.5 cm )も小さめで、飾る場所をえらばないと思われます。
「時代については、銘文がなく、平等院草創期すなわち天喜元年(1053)ころとするもの、平安時代後期まで下がるとするものなど諸説あり現在まで決定的な説はない」(*)
また梵鐘研究の第一人者、坪井良平氏は次のように述べられています。
「・・種々の点から平等院の草創期の製作にかかるものであることを信ずる・・意匠に多分に平安時代前期の特徴を含むとともに、また多分に後期のものの特徴を発揮していて、中間の過渡時代の製作にかかるものであることを示している」『日本の梵鐘』
状態は、入手時、四つ折りになっており、中央が少し破れていました。裏打ちで破れは目立たなくなりましたが、若干折皺と薄茶のシミは残っております。経年変化として味わっていただける程度かと思われます。
ふと気になり、手元の10円玉、平成17年のものを、ルーペでみてみました。大棟の両端の一対の鳳凰にいたるまで、実に精緻に、平等院が刻まれています。こんなに美しい硬貨を日々使っているのかと思った次第です。
*『国宝平等院展』平成十二年度
・左と中央の画像:アクリル板をはずして撮ったものです。
・右画像:飾った感じです。右下は映り込んだものをカットしています。
どうもありがとうございました |
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