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鏡板の上部三分の一を欠失したことによって、挿花と覆輪が際立ち、かえって造形的に面白さが増したように感じられる室町時代の懸仏です。
面長な顔に、小さく目、鼻、口を打ち出し、両手を胸前にて合掌する本尊は、尊名不詳ですが、おっとりと可愛らしい仏様です。
華瓶はふくよかで本尊に比し大きく、挿花は子供が鋏で切り取ったり、切込みを入れたような古拙の趣があります。
時代を経た柔らかさを見せる木板、緑青、その下から、覆輪・華瓶など所々淡く輝く鍍金、色や材質の異なるものが美しく融合しています。
裏面の墨書は、二十三年と、その上の文字の下半分から、応永(*)23年(1416)と読めます。ちょうど六百年前、奉納者、お名前は判読出来なかったのですが、何を念っていたのでしょうか。
径:18 cm 箱なし
一番下の板は覆輪によって繋がっている状態です。
撮影時に使用したアクリル皿立ておつけいたします。
*参考画像:応永年号の日吉大社懸仏『戦国・安土桃山の造像』
どうもありがとうございました。 |
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