|
東大寺の図録にいくつも掲載されている東大寺102世、宗性(そうしょう)筆、仏書切です。
筆者の宗性(1202 - 78)は「鎌倉中期の華厳宗の学僧・・宮内権大輔(ごんのたいふ)藤原隆兼の子・・十三歳で東大寺に入り・・華厳、倶舎、唯識・因明・天台の諸学を修め・・60年東大寺別当に就任、華厳学を大成し同寺教学の振興に尽くす」『日本仏教人名辞典』
「日夜先学・古賢の古写本・遺著等を抄録し・・仏教・漢学に対する造脂を益々深め・・後嵯峨上皇の請により華厳経を講じ、料紙等を下賜せられ、後日華厳経伝・同祖師伝等をその料紙を用いて書写するに至った・・その抄録本の厖大な数量と、その引用せる古本が由緒正しいものである点に、その価値が高く評価される」「東大寺宗性筆聖教并抄録本解説」
「書写本のうち、最も早いものは、宗性が十四歳の時・・晩年の写本としては七十四才の時・・東大寺の中世教学の再興に努めた高僧である」『新指定重要文化財8 書籍・典籍 古文書』
以上、あまり一般的には著名な方ではないかと思われ、プロフィールをご紹介いたしました。
この独特の書体は、厖大な量の書写から産まれた速筆故の姿だったのです。
改めてその書を見れば、針先のような入筆から一気にかろやかに終筆へと向かう横画、くるりと筆先を廻す転折、終筆から次の起筆へと料紙すれすれに移動し、極細の命毛の筆線は、鋭く、美しく、躍動します。
やや扁平で、大振りな書は、一文字ひと文字が独立し、升目にでも書いたかのように整然と並びます。
軸にしても愉しいかと思われます。
本紙:30.6 x 9.2 cm 額:42.7 x 35.1 cm
比較参考画像は『古筆手鑑大成第十巻 翰墨帖 岩国・吉川家蔵』(重美)に貼り込まれている宗性と考えられる断簡です。
どうもありがとうございました |
|