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「荼毘紙」と称される特殊な料紙と、『大聖武』に比しやや小振りの文字から、『中聖武』と呼ばれる奈良時代に書写された『根本説一切有部毘奈耶雜事巻第四十』です。
所謂「整斉とした写経体」ではありません。手だれが、思うまま、その力を余すこと無く出し切った感のある、個性が感じられる、力強い書です。
参考画像は、東博所蔵の重文・古筆手鑑『月臺』の『根本説一切有部毘奈耶雜事巻第三十四』で、本断簡と一具と考えられます。
「『中聖武』というのは『大聖武』と同じような荼毘紙に書かれた唐時代写経の総称で・・経名も書風も一様ではない」『植村和堂コレクション 古写経』
「遺品は比較的少なく・・その他の遺品よりおそらく一切経として書写されたものの遺巻ではないか」
『写経の鑑賞基礎知識』
このように謎が残る『中聖武』ですが、個人的には唐人の手による一切経の一部と考えるものです。
表具の上下は灰色がかった茶の古い揉み紙、中はやや明るい茶、一文字と風帯は薄茶地金襴、軸先は黒塗りの撥型、それぞれ時代のあるものが調和し、渋く落ち着いた表装です。
本紙の虫損も、軸装でご覧いただくと、自然な経年変化、ひとつの景色に見えてまいります。
書写年代8世紀にのぼる、おそらく唐人の手による古写経のひとひら、古裂で荘厳し、その織りなす世界を愉しむ。贅沢なことです。
太巻 本紙:27.5 x 6.3 cm 軸:115 x 27.5 cm
どうもありがとうございました。
This is Buddhist Sutra hand copied in 8th century, commonly known as "Chu-Jomu".
"chu" means medium-sized and "Jomu" comes from Emperor Shomu in Nara Period, and "Chu-Jomu" is one of the most highly evaluated old Sutras. The characteristic of "Chu-Jomu" is the special paper containing sand-like grains.
We Japanese appreciate even a fragment of old Sutra by making it into a hanging scroll like this if the handwriting is beautiful.
What is interesting is there is a possibility that "Chu-Jomu" was written by a Chinese in the Tang period.
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