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「綱敷(つなしき)天神」といわれる、綱を巻いた円座に座っている束帯天神像です。
「左遷され太宰府に向かう船旅の途上、上陸地に休憩をとる場所がないため、船の艫綱(ともづな)を巻いて敷いた」(*)という言い伝えによるものです。
「画像に天神ゆかりの梅と松を描き加えるものは多いが、これを画面いっぱいに樹林として表現する作品は、室町時代を代表する画僧・雪舟等楊(1420 - 1506?)の発案であろうと考えられている」
上記解説は、本天神像によく似ている参考画像(*)についてのものです。
「・・白文方印「等楊」がある・・雪舟が明応二年に描いたことになるが、肩の全体的なラインが整っておらず、笏の下方が幅広となり不自然な形で表されることから模本とみてよいと考えられる。ただし顔貌の描写は丁寧で、樹木の濃淡は空間の奥行きを自然に表しているなど・・全体的に雪舟の表現をよく伝えていると思われる」参考画像・右の解説より
「秋月等観(しゅうげつとうがん・生没年未詳)が作者の有力な候補・・薩摩出身で、雪舟に直接に学んだ画家で・・雪舟の様式をよく受け継いだ弟子の一人で・・師が作り上げた新たな天神像の枠組みが継承されている」参考画像・左の解説より
本天神像は、様式、趣ともに参考画像によく似るものです。また顔の描写に比しその他、特に足など不自然なところから、本図も模本である可能性が高いと考えます。左右等多少詰められているようですが、梅と松の木々を背景に威風堂々とした菅公を配するバランスも好いように思われます。
状態は、巻皺と皺の部分が切れて、裏打ちでつないでいます。
天神さまの画像は「現実に生きた人間菅原道真の肖像として認識され、同時に天神としての神威を感じさせる画像でなければならなかった」『天神さまの美術』
本天神像は雪舟発案のスタイルを持つものです。また誠実な人柄が感じられる好いお顔で、菅公にたいする敬愛の念が湧いてくる一幅と思われます。
時代はよく分かりませんが、参考画像と同じ16世紀、下っても江戸初17世紀はあるようにみえます。
表装は本紙との間に金襴をはさみ黒に近い濃い緑を廻しました。渋い中にも荘厳さが表れていると思われます。
紙本 本紙:76 x 42 cm 軸:123 x 52.5 cm
*:画像・引用:『国宝 天神さま』
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