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『中聖武』、香木の粉末を漉き込んだ荼毘紙と呼ばれる独特の料紙に書写された、奈良時代の古写経です。
香抹を漉き込んだのは虫損を避けるため、また荼毘紙という名は、その香抹をお釈迦様の骨粉と見たてたところによるようです。同じく荼毘紙に書写された、一行あたり十一から十三文字程の大字のものは『大聖武』とされ、ともに伝承筆者を聖武天皇とします。
手鑑の巻頭は『大聖武』、手に入らない場合は『中聖武』とするなど、その珍重されようは、他の古筆切とは少し異なる古写経切です。
『中聖武』には何種類かあるのですが、該断簡は『根本説一切有部毘奈耶雜事 卷第四十』で、東博収蔵の重文・手鑑『月臺』所収の『根本説一切有部毘奈耶雜事 巻第三十四』と一具と考えられます。
「遺品は比較的少なく・・一切経として書写されたものの遺巻ではないか・・書写年代は奈良中期から後期」(*1)ともありますし、「唐朝舶載の貴重な遺品とそうていするのが至当であろう」(*2)と、将来経の可能性もあるようです。
『根本説一切有部毘奈耶雜事』は四十巻本で、該断簡は巻第四十。最後の巻で力が入ったのでしょうか。書き手の個性が感じられる、堂々としたなかなか好い書だと思われます。8世紀
本紙:27.6 x 2.1 cm 額:42 x 22 cm
*1『写経の鑑賞基礎知識』
*2『センチュリーミュージアム名品展』
どうもありがとうございました
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