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その名のとおり、京都高雄山神護寺に伝来したものです。『神護寺経』というと、平安時代後期の紺紙金字一切経がよく知られていますが、本断簡はそれより約三百年ほどさかのぼる、弘仁年間(*1)に書写された神護寺素紙一切経、紙本墨書の『大宝積経』です。
文字の比較は『写経 見方と習い方』所載の神護寺一切経『大宝積経巻第五十』からです。本断簡も同じ『大宝積経巻第五十』で、ご覧のとおり、同筆と考えます。見えづらいのですが、本断簡、参考画像とも料紙に簾の目が淡い濃淡となっている様子が確認できます。界高も紙高も資料と一致(*2)するものです。
本紙が細長いのでそのままマットに載せて額装しました。裏面から手鑑はずしと分かるのですが、本紙の周りに台紙の金色がかすかにみえます。
植村和堂先生は「頗る引き緊まった結体で、風格が高い」と評されています。
天平経の気分をのこしつつ、天平経とは雰囲気がやや異なり、柔らかみが感じられ、ゆったりと書写する姿が目に浮かぶようです。
本紙:27x 3.8 cm 額:42 x 21.8 cm
*1:810 〜 823年
*2:紙高:9寸 界高:7寸3分5厘(『日本写経綜鑒』田中塊堂)
どうもありがとうございました |
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