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下に「現 権 王 蔵 山 野 吉」との陰刻が入る、蔵王権現の大振りな版画です。蔵王権現は、役小角(*)が金峯山で修行の際感得したと伝えられる、インドに起源をみない日本独自の仏様です。
「頂上に三鈷冠を戴き、額の左右で髪を逆立て、三目につくる。右手は三鈷杵を執って振り上げ、左手は拳印をつくって腰辺におく。また左足は盤石を踏み、右足は膝を曲げて高く上げる」『山岳信仰の遺宝』
めらめらと火焔光背を背に、天衣(てんね)を頭上まで舞い上げ、髪を逆立て、蹴り上げた足の勢いか天衣の端を翻す迫力ある動の姿です。お顔の割りに大きく思われる双眸ですが、眼差はどこか諭すような慈悲の相にも感じられます。浅学にて時代はよく分かりませんが江戸末期はあるのではないかと思われます。
とても痛んだ紙表具でしたので、本紙のみマット上に広げ両面テープで軽く留め、ガラスでプレスしています。小孔が目立たぬよう同系色のマット上に載せました。額は黒い太めの木製です。大きめの本紙に力強いデザインです。ちょっと距離をおいてみてもよい感じです。
額53.5 x 28.8 cm
*役小角(えんのおづぬ・7世紀後半~8世紀)
役行者(えんのぎょうじゃ)と尊称される。奈良時代以前に山岳修行を行い、葛城山や金峯山を開いた・・吉野の金峯山寺は彼がここで蔵王権現を感得したことにはじまるという。『仏教人物事典』
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