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    新潮社 工芸青花KOGEI SEIKA 21 「掲載現品」 
 
・キリスト像 フランス13世紀初 金銅・七宝 
総高21.2㎝ 
 
通常散見されるリモージュに比べ大ぶりでボリュームがあり、鍍金、七宝のコンデイションや美しさは同時代のリモージュに比べ秀でております。 
 
どことなく寂しそうややや不服そうな表情もまた生々しく魅了的なリモージュと思います。 
 
※価格詳細はお問い合わせください 
 
工芸青花21号より引用 
かつては全身をおおっていた鍍金は摩滅し、キリストのおでこ、髪、鎖骨などにきらめいているのみだが、むしろそのかそけさが好ましい。 
ロマネスク期はキリストが死に勝利する姿が好まれたため、王冠をかぶり、眼は大きくみひらく。磔 
刑で打たれる釘(聖針)も、ゴシック期は三、ロマネスクは四。したがってこの像も、リモージュがロマネスク様式を維持した一三世紀初頭(一二二〇年以前)の作だろう。たっぷりとしたお腹や肋骨の表現は同手の作をみるが、冠の文様や、髭髪の表現、への字の口はめずらしい。 
こうした七宝(エマーユ)細工の聖具は、ビザンティンの影響により十一世紀末から欧州各地でつくられるが、十二世紀にシャンルヴェ技法(銅板の凹みに羽ペンで釉薬をほどこす)が生れ、美しいグラデ-ションをみせるようになる。 
修道院の隆盛とともに、聖遺物箱や福音書の装丁などがエマーユにより豪華にかざられた。人像も初期は平面的だったが、しだいに頭部のみを半立体化した「スタンピング」 
や、十二世紀末からは全身を半立体化した「アップリケ」様式が登場する(本作も同)。リモージュがエマーユ細工の産地として名声を博すのもそのころの 
こと。 
この磔刑像は十字架もしくは福音書の表紙をかざっていたものかもしれない。いずれにしても聖堂では祭壇前におかれ、祝日には、行列で高くかかげられたことだろう。(金沢百枝) 
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