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最初にこれを見たときには御本茶碗や赤上がりの李朝茶碗かなと思いました。しかし高台や側面の絵付けを見てみれば唐津の木原茶碗であるのがわかります。
ただ単に木原と聞くとベテラン骨董ファンは「あぁ~木原ね~、ハイハイ、むか~し入門の時に買ったなぁ~」、とまあこんな答えが返ってきそうですね。
確かに世にたくさん出回っていますし、桃山唐津の終焉みたいな感じの立ち位置で微妙というところかもしれません。またそのほとんどが陶胎に染付で青く山水などが描かれ、素地の影響で白い釉薬がくぐもった灰色になってしまい、あまり面白味の無い雑器とされてしまっていました。
でも窯中でちょっとした酸化焼成に傾いたのか、ときたまこのような赤上がりがありますね。特にこれは赤みが強く出ていて上記のようなイメージが立ち上がってくる稀有な存在でしょう。
またサイズもレギュラーが口径10センチ前後なのに、これは12.5~13.1センチもあり、より抹茶碗のテイストが感じられます。
さてこうなると疵もなんのその、むしろ伝世してきた高麗茶碗の凄みさえ感じられて古い繕いも愛おしくなってくるから不思議なもの。
思えば木原茶碗は安物、駄物という常識は古い感覚に囚われすぎな思い込みなんだと、こういう好ましい一碗が教えてくれる、というのは手前みそ過ぎるでしょうか。
間違いなく私が今まで扱ってきた木原でもトップの優品です。探せと云われてもお断りするようなこんなものも、ひょいっと買えるのがまたこの世界の妙味でしょうか。
ちなみに絵柄は宝船、これから年末~お正月の季節に使いたいもの、最後の最後につきあっていけるのはこんな最果ての凡器なんじゃないでしょうか。
古民藝好きの方にはもちろん、まだご存知ない方にこそ知っていただきたいものです。
口径12.5~13.1 高さ8.2~8.4センチ
江戸時代前期
味のいい曲げ物に収められています。格子文の風呂敷が添っています。
画像でご覧頂けるように金繕いやニュウ、胴外側の下部にひっつき痕がありました。直しも古い時代のもので、取り上げられてから長らく愛用されてきたようで、落ち着いた茶渋が付着しています。
画像に出てくる盆は付属しませんのでご了承下さい。 |
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55,000円
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