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たんなる下手な堅手壺、そう思い歯牙にもかけず過ぎ去ろうとした。しかし心の中で何かが引っかかる・・・、なんだろう?この感覚は・・。自分が拾い上げなければいけないような気がして戻ってみると、とっくに誰か目の利いた人が
買っていた・・・・。
なんて、そんなこともなくやっぱりそれはそこに釘が打たれたように誰からも見向きもされないで転がっていた。
それがこの壺との馴れ初めというか出会いでありました。なんとも情けなくカッコ悪く、申し訳ないような想いがいまも残る壺です。
見ると不格好に歪んでいる塩笥形ですが、云うなれば膨らんだ焼餅のような胴がなんともたまらず愛らしい。陶工としては真っ白な白磁に焼き上げたかったんでしょうが、土や技術の問題でそうなれない野暮ったい地方窯だったんでしょうね。しかしそれはそれであまり気にせず「ケンチャナヨ」と出荷していた人々の鼻唄のようなものも聞こえてきそう。
釉薬の溜まりは碧く貫入には味がしみ込んでいい味わいになっています。末期にも下手な白磁はありますがそれではなく、この手は前期の堅手と呼ぶべき一群ですね。
青山二郎旧蔵の塩笥壺に「白袴」と呼ばれる有名なものがありますが、そんなことをイメージさせるものがもしかしたら引っかかったポイントなのかもしれません。
彼の品は名品でとても同列には扱えませんし、青山二郎の後で白袴のすばらしさを力説してもコロンブスの後追いのようなもの、と書いておられた方もいらっしゃいましたが、それでもこの力強い胴の張りはなかなかに得難いものでしょう。
これも負けてないぞとは云いませんが、少なくとも拾い上げるべき名もない佳品であったんじゃないかなと、多少手前味噌ながら思っています。
いい味の棚に飾って愉しんでみては如何でしょう。
高さ7.3 胴径11.3センチ
朝鮮時代前期
桐箱に収められています。木綿の包み布と白い風呂敷が添っています。
口縁に直しがあります。
画像に出てくる敷板は付属しませんのでご了承下さい。
御売約ありがとうございます。 |
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