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過去にもご紹介したことがあるのですが、こちらの瓦の残欠。現在の栃木県下野市にかつて存在した古寺、聖武天皇の詔によって各国に造営された国分寺の屋根瓦の残欠です。
下野国分寺址は、昔は長らく整備されて来なかったのであくまでも表面採集でしょうが、このような瓦がたくさん採集されて巷間に存在しているものです。(今は国の史跡址に指定されて勝手に発掘も出来ませんし、法改正によって土中のものも個人が所有できないことになっていますので、くれぐれも法に抵触するようなことはなさらないでくださいね。)
さてここの軒丸瓦は独特の文様なので区別しやすくすぐにわかるものですね。複弁の子葉の周りに圏唐草文というもので、白鳳時代の都の瓦に比較すれば退化傾向は否めないものの、美しい蔓が周縁部に配されて愛らしい文様が愉しいものです。
そして今回は文字瓦も付属していて、さらに資料としても貴重なものになっているかと思います。
文字瓦は途中で切れているものの「国分寺」の文字が見てとれます。もう一つはなんと読むのかはわかりませんが、郡部名というよりは納入した人物の氏がスタンプのようなもので押されています。
当然のことなのですが、軒丸瓦も文字瓦も膨大な瓦の内のほんの一握りであり、とても稀少なものです。
考古入門のようなものでしょうが、往時に想いを馳せることが出来る「見ぬ世の友」が残してくれた宝珠ではないでしょうか。
軒丸瓦 巾19.5センチ
国分寺文字入り 巾14.7センチ
文字入り残欠 巾10.5センチ
奈良時代8世紀
画像に出てくる敷板は付属しませんのでご了承下さい。
参考画像 昭和63年10月 京都国立博物館発行 特別展「畿内と東国 埋もれた律令国家」図録より
御売約ありがとうございます。 |
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