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数々の名品ひしめく朝鮮陶磁のなかで、どちらかと云えば格調ではなく、その野性味のようなもので語られる鉄砂の一群。その一番有名なところはデフォルメしまくった龍の壺や安宅コレクションの虎と鷺が描かれた壺でしょうか。上手く描こうとかほどほどでまとめようとかの意識を全く感じない、ケンチョナヨの感覚は理解しがたいものではあるでしょうから、それだけに我々には作り出せない力強さを内包しているものではありますね。
さてそんな立派なものは美術館で眺めるとしてですね・・、座辺で転がしておいて、時には朝の散歩で連れて帰ってきた野花を投げ入れたいというこんな瓶は如何でしょうか。
徳利形に成形された瓶の肩には二か所に鉄の花?のようなグリグリが自由に描かれています。ちっとも逡巡せずに鼻唄交じりに描かれたそれは「これでいいのだ!」と云わんばかり。元気いっぱい健康的に咲いて?います。
厚めに轆轤成形した後に銅の部分を垂直にスパッと気持ちよく削ぎ落としています。リズミカルなんだけど決して均一にならないのは民族性故か。そして大きな貫入の部分に入った味もいい質感になっています。
口縁の欠損は残念ながら、でも鉄砂の徳利は意図的に落としたものも多く致し方ないところかとも思います。この状態で長く時間が経過していて馴染んでしまっているので、繕うかどうかはお好みにして頂いていいのではないでしょうか。割れ口が花を呼ぶということもあるでしょうからね。
民藝という括りは窮屈に解釈されることも多いかもしれませんが、自由で健康的なもので、なおかつ現代にも通じる有り様が共感できる、それが現代の民藝の在り方でしょうから、そういったことではその代表に挙げてもいいものじゃないかと思います。
まあ理屈はともかく、その姿を時には花と共に愉しんで頂ければいいんじゃないでしょうか。
高さ17.3センチ 胴径10.5センチ
朝鮮時代中期~後期
桐箱に収められています。
画像でご覧頂ける様に口縁の欠損があります。
御売約ありがとうございます。 |
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