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近代の財界に生きた大茶人、松永安左ェ門(松永耳庵)による自筆の銘々皿です。焼成は金沢の楽窯「大樋長左衛門窯」によるもので、金沢へ仕事か茶会で立ち寄った際に手遊びで製作したのでしょう。文言は論語の「十五歳志学 六十耳順 七十従心」を当意即妙にアレンジしたもので「十歳立志(十歳で学問を志し)八十耳順(八十歳で素直に意見に耳を傾け)百才心超矩(百歳では心の思うまま行動しても人としての道理を外さないであろう)耳庵八十六」と松永らしく洒落ています。耳庵86歳、昭和36年の作ですので小田原の松永記念館が開館した2年後という事になり、数奇者人生として老境にあたります。
無瑕完好。タタラ成形で荒々しく縁を落とした作行は魯山人の影響を感じさせるため、成形や釉掛けも松永自身で行った可能性があります。釉は大樋窯らしい飴ぐすり。窯を焚いたのは先代の陶治斎(十代)でしょう。独り茶を喫するときの愉しみとして、または気心知れた仲間との茶会に干菓子器として如何でしょうか。
径 150mm
付属品:桐板目箱
昭和36年作
*年表参照:『茶の湯交遊録 小林一三と松永安左ェ門』(思文閣出版)
◎御約定:早々ありがとうございました。
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