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全国あちらこちらで沢山出てくるこの恵比寿大黒のコンビ、それだけ盛んに信仰された御利益の多い神さまだったのでしょう。縁結びや商売繁盛、持っておられるものも打ち出の小槌に大きな鯛、めでたさも相まって星の数ほど作られたお像であると思います。
しかし専門の仏師や彫刻家に発注できる人は本当に数が限られた裕福な人のみであったわけで、その多くは大工さんや近所の手先の器用な人に依頼することが普通であったでしょう。いわゆる民衆仏とはこうした名もない人によるほとけさまであるわけです。
ですから技量が稚拙である分、造形がいい加減であったり、表現がでたらめであるのが面白い所、個性あふれるお顔の一つ一つが唯一無二の得難い像になるわけですね。ただそうは云っても好みというか、愉しい造形のそれはやはり少ないもので、たくさん扱ってきた恵比寿大黒ではありますが、久しく仕入れることがありませんでした。
そんな気持ちを覆すような面白いコンビに久しぶりに会うことができたなと思っています。出た場所は仙台近辺と聞いていますが、彼の地の特徴的なものがあるとも思えません。なにかなと考えてこのお顔は「そうだ~埴輪のようだ!」と思い当たりました。
古墳時代の文化がそのままこの時代にも残っていた、なんてことは一口に云えないとは思いますが、人間の初源の造形意識がここに表れているようにも思えます。
山奥の隔絶された村などは、交通機関が発達するまでは他の地域との交流があまりに少なく、古代の縄文文化が手つかずで残っていた、なんて話しも聞きますね。これらが産まれたところがそんな村だったかどうかはわかりませんが、少なくとも長い間神棚で厨子の中に安置されて庶民の暮らしを見守り続けてきたことだけは確かなんでしょう。
ロボットみたいなユーモラスな形を愉しみつつ、民間信仰の遺産として次世代に大切に伝えていきたいものです。
大黒神 高さ14.1センチ 最大巾9.4センチ
恵比須神 高さ14.9センチ 最大巾11.9センチ
江戸~明治時代頃
特に目立つ虫食いや傷みなどはありません。
御売約ありがとうございます。
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