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イランで12−13世紀頃に焼成された素晴らしいラスター彩陶の盃です。極めて軟陶なので非常に壊れやすく、カセやすいこの手の作品の中で、素晴らしい状態で一切の補修なく現存している作品はとても希少です。よく補修された鉢を見かけますが、あまり魅力を感じないことが多いのですが、この盃はサイズもちょうど良く、カセも補修も土臭もありません。旧蔵者の方も酒器に使っていたようで、艶やかでキラキラしています。このようなサイズ感と品質の作品を私は今までにほとんど見た事がありません。超希少品とか大名品とは喧伝しませんが、これくらい良いヤツは多分、探してもなかなか無いので手に入れた方が手放さないのだろうと思います。
ラスター彩とは、焼成した白い錫の鉛釉の上に、銅や銀などの酸化物で文様を描いて低火度還元焔焼成で製作された金彩に似た輝きをもつ、9世紀-14世紀のイスラム陶器の一種で、ラスター(luster)とは、落ち着いた輝きという意味です。中国建窯(中国語版)の、曜変・油滴・禾目などの天目茶碗は、この影響を受けて作られたとも考えられています。日本では人間国宝の加藤卓男さんがラスター彩の再現に注力されていました。
私の専門の中国美術と西域、イランやエジプトとの関連性は深く、中国美術の紀元とも考えられる作品を多数産出しています。オリエント美術は非常に深く広大なロマンに満ちあふれ、私も常に非常に熱い視線を注いでいます。将来的に避けては通れない分野でしょう。実際に使える状態のオリエント作品は数多くありません。見て、触れて、使って愉しめる素晴らしいオリエント美術。800−900年前のイランの人もこの盃でワインやお茶を呑んでいたのです。それを夢想するだけで雄大な歴史に触れたような気がして、心は遥か彼方西域に導かれる思いです。これも又、古美術の魅力の一つではないでしょうか。
産地:イラン
時代:12−13世紀
寸法:口径約8.1cm 高さ3.6cm
状態:口縁に極小傷一ヵ所のみ
次第:桐箱
早々の御売約ありがとうございます!
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