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太古のむかしに火を手に入れた人間は、そのすさまじい力に時に手ひどい疵を負わせられてきたわけですが、またそのとてつもない恩恵を享受して今日の発展を築き上げてきました。
煮たり焼いたり蒸し焼きにしたりと様々な食物を美味しく、また食べやすく加工してきたりは勿論のこと、時には猛獣を追い払ってくれたりもしたでしょう。まこと人類の発展は火と共にあったといっても過言ではないわけですね。
さてその火を熾す道具がこの火打ち箱。鉄と石英質の石を激しくこすり合わせて出た火花を附木に
移して、そこから灯し油の芯に点火するわけですね。
附木はなるべく湿気らないように蓋が付いています。もう一つの窪みには石と金具が入っていたのでしょうが、附木同様、今は無くなっています。
簡単な箱がほとんどなのですが、これはまた一段と素朴な刳り抜きの箱ですね。丸太を簡単に面取りして据わりをよくして、中をわざわざ刳り抜いて作っています。板材で組んだ方が簡単なようにも思いますが、現代と違う時間感覚で暮らしていた人はあまり効率など気にせず、こうして端材を利用して作ったのでしょう。
厨房や囲炉裏端に置いていたのでしょうから、煤を被ってとろとろ味に変化しています。
しかしまあよくこんな生活の道具が残っていたものだと逆に感心します。だって立派な桐箱に収められたハレの日のお道具であれば、誰しもが大切にしていたと思いますが、古いモノが溢れていた田舎の人々がこれを燃やしたりゴミとして廃棄したりというのが普通で、評価などまったくしないと思うのです。そう考えると素朴なこの道具の運命はいかに強靭なものであったのかと拍手したいような心持になりますね。
灯りの道具をお集めのコレクターさんはいろいろとお持ちだとは思いますが、こうした古民藝のお品はワンアンドオンリー、また違う表情を見せてくれますし、木のもの好きにはたまらない質感で魅了されますよ。
長さ22.2センチ 最大巾8.5センチ 最大高6.5センチ
江戸~明治頃
無垢の丸太を使用していますので経年変化で割れなどが発生していますが、特に欠点にもならないものと思います。虫食いなどもありません。
御売約ありがとうございます。
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