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世の中にはしばしば誰にでも分かりやすいオーラを放って、その分野に不案内な人間をも惹き付けてしまうモノがありますが、このイコンなんかもそんなモノの一つでしょうか…キリスト教美術門外漢の私をいとも容易く飛び込ませてくれました。
観音開きの厨子の扉絵と思われますが、割と状態がいいので内側だったのかも知れません。店に飾っていた所、仏教美術の先生やロマネスクの写真で有名なカメラマンさん等が「古い古い」と云うので、キリスト教美術に明るい方々にも観て頂きました。ギリシャを含むビザンティンの影響下にある地域の作品との事。17cはあるだろうと云うのが大方の意見で、もしかしたら16cまで上がる可能性もありそうですが、時代・地域を厳密に特定するのは難しいそうです。
Wiki の『イコン』中の【3.3.5西欧化】(17世紀~19世紀) の項目には「伝統的なビザンティン・イコンでは、厳粛で引き締まった表情…この世の背後にあるものを画く…」等の文言があり、描かれる人や動物は全て神の光に照らされているそうで、背景に金泥を用いるのはその光輝く世界を表現しているのでしょう。 一方、西欧化した(ロシア)イコンでは、写実性・自然・忠実な人体描写・肉体の美…といった特徴が上げられています。ここに書かれている事はイコンに限らず、キリスト教美術全般に共通の流れの様に思いますが、本品は前者に入るものでしょう。いずれにせよイコンの世界では17cまで時代の上がるモノはそうはないらしく、なかなか貴重なモノの様です。そこら辺は仏教美術の17cとはだいぶ感覚が違いますね。
尚、描かれている聖人の名前は不明ですが、下には珍しい人面獅子=マンティコアも。
◆ 高さ15,6cm 幅7cm。旧蔵者の愛着が偲ばれるとても上等な額に収まっています。木製、金泥、テンペラ彩色。
左上の形状は割れているのではなく元からのものです。
☆ ご売約となりました。ありがとうございました。 |
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