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初期伊万里は、朝鮮や中国の陶工たちが始めた窯ですので、試行錯誤はあったにせよ、割合最初からいろんな彼の地の技法を試しています。その中ではなかなか再現が難しかったのではないかと思われる青磁の茶碗をご紹介いたします。
やや口縁がスッポン口に近い天目成りの造形、その裾の部分には鎬手の彫りが施されています。同じ造形で口縁付近まで伸びた鎬の間に染付で「壽」や「福」の文字を入れたり、あるいは外側には全面鉄釉を掛けて見込みに染付で菊花文を入れたりと、いくつかバリエーションがありますが、前面に青磁釉、しかも高台の内側まで総釉掛けというのはちょっと少ないように思います。
窯のなかで温度が上がりきれなかったのか全体的に甘めな焼成り、青磁の発色も理想通りにはいかなかったようです。しかしこれはこれで柔らかく土もの的なニュアンスを感じていいとも思えるし、磁器創出の黎明期の所産のひとつでもあるわけで、こうして約400年前のものが残ってきてくれたことに感謝しなけりゃいけませんね。
深い玉の輝きとはまた違いますが、ペールトーンの淡い色味はまた別の魅力があると思います。
お茶やコーヒーに使って愉しめる初期伊万里、貫入に味が染みてくるとまた違った表情を見せてくれるのではないでしょうか。
口径10.3~10.9センチ 高さ6.8センチ
江戸時代初期
桐箱に収められています。
口縁に金繕いが4か所、ニュウも4本ほどありました。見込みには少し降りものを取った痕が見られます。甘めの焼成りではあるのですが、お使い頂くのに特に支障はありません。
御売約ありがとうございます。 |
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