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うっすらと枇杷色がかったところが魅力的な碗ですね。ずいぶん長いこと愛玩されてきたことが窺えるしっとりとした土味もチャームポイントです。
石ハゼというのは素地のなかに含まれた石が焼成によって器形が縮むことで表面に突出してくる変化のこと、当然これは使いづらいということで不良品だったわけですが、そこは穿ちの視点でものを見る数寄者のこと、このイレギュラーこそが面白いと取り上げたのが石ハゼ茶碗と呼ばれています。
これは轆轤成形の段階で石の存在がわかったようで、指で修正しようとした痕が見られます。しかしまったく初めからやり直すということもせずにそのまま焼いたようですね。2か所の石ハゼがあり、ひとつは食んだまま、もうひとつは反対側に抜けてしまったようです。欠点ですが景色とも云えて丁寧に金で繕っています。意外なことに何にもないよりこうした欠点がある方が逆に茶味があるというのもまた面白いところでしょうね。もちろん肝心要の部分に欠点があって喫茶に支障があるようではつらいですが・・。「月も雲間になきはいやなり」の心情が日本人にはしっくりくるものです。
釉調はおとなしめですが、石ハゼ部分のあたりは内外とも赤みがさしてしっとりとした膚合い、小碗ではありますが、お茶にもお酒にもどちらも気持ちよくお使い頂けるのではないでしょうか。
ベベらのようにハゼを修正したおかげで歪みがあり、そこがまた堪らぬ風情、立ち上がり垂直に近い部分が出来たのでより指が掛かって持ちやすいところもうれしいポイントですね。
たっぷりと、ぐいぐいと、気のおけない毎日の相棒として使い込んでみてください。
口径9.2~10.0センチ 高さ5.6~6.0センチ
桃山時代~江戸初期
新しいものですがゆがみに合わせた杉箱に収められています。
口縁に1か所、胴の石ハゼ部分に1か所、それぞれ丁寧な金繕いが施されています。
御売約ありがとうございます。
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