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なんとまあ景色のいい酒盃なんでしょうかね~、と一目で惚れて買いました。そりゃ疵もあるし、だいたいが口縁を擦って覆輪を被せてあるわけだし・・。と冷静に考えたりもしたんですが、その魅力に抗しがたく私のところにやってきた次第です。
この覆輪と云うものは伏せ焼きの陶磁では当たり前にあるものですが、これは伏せ焼きしないのにも関わらずなぜ覆輪かを考えました。思うにこの伝世の味わいがしみた高台や使われてきた風情から、茶籠に仕込んだのではないかと。その際に口縁が端反っているためサイズが若干大きく、籠に合わせるために縮めたように想像しています。もちろん疵をリカバリーするためという可能性も無きにしも非ずというところですが、いずれにしても大事に伝世されてきたことは間違いないかと思います。そう考えてくると覆輪も欠点ではなく愛された痕跡じゃないかと思えますね。
分類上は堅手と一口に表記しましたが、凡百の堅手とはまったく異なるものです。象牙色の柔らかな色味、玉子手を思わせるような上がりです。
見込み中心には轆轤の渦が表れ、口縁から染みた味が村雲のように掛かって、貫入の味わいとともにとてもいい風情。たっぷりとお茶や酒を呑み込んできたことが窺い知れます。
そしてこの高台!、ざっくりとした手ごわいつくりの内側、ヘラ痕の縮緬皺がゴリゴリと立って見事な景色です。白っぽい精良な土でなかなか味が染みてはいかない土質のようですが、それが伝世味でしっとりと仕上がっています。
入れ物は見立てで、朝鮮のこよりの蓋物に収められていてこれもいい風情、包むお仕覆は少々傷みがありますが、もともと添っていたもののようで、これで籠に入っていたのでしょう。入れ物を包むのは糸味のいい浅葱の木綿風呂敷です。
お茶もいいですが、私なぞはやはりこのたっぷりとした気持ちのいい大きさで呑みたいと思ってしまいます。もっともっと使い込んで究極の愛玩一品に仕立て上げてみて頂ければ、これを取り上げた以前の数寄者たちも喜び此の上なく、といったところでしょうか。
口径10.2センチ 高さ4.5~4.7センチ
朝鮮時代前期
割れの金繕い、口縁には銀覆輪、その他口縁から短いニュウがありました。
御売約ありがとうございます。
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