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それほどたくさん読み込んでいるわけでもありませんが、網野善彦さんの著作は、それまでのやや乱暴な単一史観に対し、俗な云い方をすれば、リベラルで懐の深い包容力のある考え方に修正していきましょうというものだったかと思います。
よく三角形で表わされる階層社会に対して、いろんな古文書の読み込みからそれぞれの集団においての自由な豊かなスペースがあったとするいわゆるアジール論は実に自分にとって新鮮なものでした。
唐突にそんなことを書いたのは、自分の商売に深く関わってくる中世古窯と云うものに興味を持ったきっかけがそんなことだったからです。この仕事を始めた頃には中世の文物を実際に自分が
扱うことができるなどと夢にも思わなかったわけですが・・、縁とは不思議なものでこうしてまた今日、一つの壺をご紹介するのに新たにそんな当初の新鮮で深い感銘が甦って来る想いに襟を正したい気持ちになりました。
前置きが長すぎましたが、こちらは愛知県の渥美半島で焼かれた壺です。この窯は基本的に施釉する窯なので釉薬の刷毛痕が残るものが、いかにもそれらしく明快なもの、これも胴や頸部に黄土色の灰釉痕が明瞭に残っているのがうれしいところでしょうか。施釉は基本的にみな薄いので、このようにはっきりと残っているものは少ないものです。
釘彫りの文様などはない素文壺ですが、焼成がきっちりとして灰黒色に焼けた素地と灰釉のコントラストがきれいに映えている一品です。
土質は砂気の多い渥美らしいもの、美しいフォルムも持ち合わせていて、基準点になるようないい壺と自負しております。
参考画像は平安末期の袈裟襷文が入ったもので同種とは云えませんが、施釉の感じや素地の上がりの共通性をご理解頂けるかと思います。
高さ24.1センチ 胴径18.2センチ
平安最末期~鎌倉時代初期頃
桐箱に収められています。
口縁が全体的に欠けたり摩耗したりしています。
詳細はお問い合わせ下さい。
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