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山犬の可能性もなくはないでしょうけれど、やはり稲荷信仰の広がり方を考えて狐といたしました。ただそのほとんどが泥人形であったり、陶器であったりしているわけですが、この木彫というものは極端に数が少なく、見かけることがほとんどありません。私もコレクターさんのところで見せて頂いたことはありましたが、手に入れたのは初めてです。
稲荷信仰についてはやはりその詳細は割愛させて頂きますが、地方では八幡神の信仰とミックスしたものもあり、かなり広く庶民に広まりました。狐は霊獣として恐れられ、また崇められてきたもの、狛犬のように対になって神の御前で控えているものです。
阿吽の呼吸という言葉でも知られるように、ひとつは口を結び、ひとつは口を開けて表現されていますね。江戸時代のお札では阿形が蔵鍵を咥えている図なども目にすることができます。
耳と尾は無くなっていますが、もしかすると紙や皮革などでつけられていたかもしれません。うっすらと何かくっついていた痕が見られます。しかし囲炉裏端の神棚に祀られていたようで煤を被って自然な風情で馴染んでいます。
むかしに比べるのはあまりよくありませんが、どんどんこの民間信仰の遺品は目にすることが少なくなっています。コレクターさんが放出する機会は別とすれば、ウブな状態で出てくることはもうこの先なかなかないことでしょう、私たちの世代が大切に次に伝えていきたいものですね。
高さ16.4センチ 長さ13.0センチ
江戸時代頃
欠損や剥落はありますが、この手としてはすこぶるコンディションのいいものと思います。
御売約ありがとうございます。 |
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