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私たち骨董屋にはいちばん最初に好きになったジャンルは、その後いろいろと扱うようになっても、何か特別な思い入れみたいなものがあります。三つ子の魂百までではないですが、もの数寄遍歴の最初の洗礼はいつまでたっても強く残るものですね。
私の場合はこの須恵器と云うジャンルでした。千年以上も前の古代の香気が座辺で気軽に鑑賞出来る、そして花を活けて現代の生活の中で美しく使うことが出来る、ということで夢中になっていった思い出があります。個人的な話しから始まって恐縮ですが、今もそばに一つは持ってないとさみしくなるものです。
さて数ある須恵器のなかで、自然釉のきれいなものが好まれるのは道理ですね、窯のなかで焔が暴れて出来た巧まざる景色は堪らないものがあります。そういうことではこれは及第点を頂けるお品ではないでしょうか。黒い窯変と翠の自然釉の美しさは見事な景色を作り出しています。一部に釉の剥落が見られますが、これも厚くなったところはどうしてもはがれやすいものなので自然な成り行き、何よりこのつややかな膚は説得力があると思います。
かたちは正式には平瓶(ひらか・あるいはへいべいとも)と呼ばれるもの、表記は横瓶(よこべ)としたのは箱の蔵番のシールの以前の所蔵者の表記に従いました。ちなみに横瓶というと本来は俵型の壺を呼ぶものですね。
この季節、花はそうですね・・、山吹や小手鞠、雪柳なんかきれいに映えるんではないでしょうか、どうぞお好みの花を活けて座辺でお愉しみ頂きたいと思います。
高さ12.5センチ 胴径14.3センチ
古墳時代~飛鳥 7世紀頃
以前の所蔵者が作ったと思われる桐箱に収められています。
口縁部分に2か所、共色の繕いが施されています。
詳細はお問い合わせください。
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