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雨宝童子とは天照大神が16歳で日向に下向したときの姿を表わしたもの、化身でありまた大日如来と同一視される垂迹美術の神さまです。すなわち本地垂迹とは仏がこの世の衆生を救済するために神に姿を変えて現れたものという説で、数々の神像が作られているのは皆さんよくご存知かと思います。
中世から広く両部神道の思想が流布しますが、これは真言密教でいう宇宙の構成は胎蔵、金剛の両曼荼羅でそれぞれの中心は大日如来、そして神に姿を変えたそれぞれが伊勢の内宮と外宮、天照大神と豊受大神であって、その両者が合わさって本地の大日如来を構成しているということです。
まあ難しい解説はそんなところですが、この雨宝童子の信仰、お伊勢参りが盛んだったように、それこそかっちりした仏画から当時のお土産物であった大津絵まで広く作られていったようです。ただ他の観音さまや阿弥陀さまに比較すると造像は極端に少なくなるようであまり見かけません。
この童子像、時代の判定はなかなか難しいところではありますが、中世からの信仰の広まりを考えると室町くらいからの可能性もあるかと思います。お顔の古様なところも少し時代を上げたくなるところでしょうか。
オリジナルのものか後世のものか定かではありませんが、彩色があったのが窺えます。また通常の雨宝童子が金剛宝棒という棒状のものを持ちますが、この像は宝珠が連なったものを持っているようですね。ちょうど瓢箪のようなかたちのもので、左手の宝珠もそのような形をしています。またこれが特定の違う像であるかもしれないのですが、頭頂部の五輪塔や全体のフォルムは雨宝童子に共通しています。何より信仰の広さを考えればそこに帰結するのではという結論です。
いずれにしろきっちりとした神像であるのは間違いないところ、座辺で愉しめる垂迹美術をこの機会にどうぞ。
高さ23.5センチ(台座に使用されている枡形を含まず)
御売約ありがとうございます。
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