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瀬戸の石皿と云うのは民衆のための雑器、茶店や居酒屋などで煮〆を盛り付けたり、商家の食器としてその商売にちなんだモチーフや、判じ物のような絵付けで客の目を愉しませるためのものでした。当然こわれたりすれば惜しげもなく捨てられてしまったのは云うまでもありません。
しかしそんな石皿の魅力を近世に見出したのはやはり柳 宗悦さんでしょう、それまでは下手物として顧みられなかったこのお皿に光をあてて評価したおかげで、結果的に廃棄処分を免れた
ものが数多くあったことと思います。
これは定番の絵柄ながら柳の葉が幹に比べて大きく描いてあるのが特徴的でしょうか。スッと事もなげに引かれた幹の鉄釉、ここに細かく葉を描いてはちょっと乱雑になってしまうと危惧したのか、呉須で葉を表わすのはいつものことではありますが意識的に大きく描いて、ちょっと引いて見た柳のしだれる様子を見事に簡潔な筆致で表現しています。余白の美しさも計算してのことでしょうか実に見事ですね。
と想像してしまいますがおそらくそんな細かいことは考えていないんでしょうね、何千枚と絵付けをしていくうちに無意識の状態で手が自動的に動いて勝手に出来上がってた、という感じでしょう。まさに禅の境地のようなものかもしれません。
ともすれば他人を押しのけて自己主張ばかりしてしまう現代人(もちろん私自身も入ってますが・・)、とっくの昔に忘れ去ってしまった心根のようなものがこんなやきものに表れると云うところが、堪らなく私たちを魅了するんでしょう。すがすがしい素朴な絵付けを座辺で愉しんでみてください。
直径27.0センチ 高さ4.9センチ
江戸時代後期
ニュウが2本、また口縁は細かな削げや擦れがありますが、この手のものについては疵は当然あるもの、あまり気にならない程度のものです。
御売約ありがとうございます。
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