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天平勝宝四年(752)に開眼供養が行われた東大寺大仏は、
二度の兵火により大きな損傷を受け、造立当初の部分は
膝の部分などごくわずかとなっています。
大仏の坐す台座を廻る蓮弁は、損傷を受けながらも、
当初の姿を留めており、天平の造形を今に伝えています。
天平勝宝八年から天平宝字元年(756~7)に
蓮弁に施された蓮華蔵世界を表現した線刻画は、
数少ない上代絵画資料として貴重なものです。
出品の拓本は盧舎那仏(大仏)を中心とする三千世界の
小世界(蓮弁)の中尊仏となる釈迦如来を囲む
菩薩衆の部分です。
菩薩等に見られる数ヶ所の丸い部分は蓮弁の鋳造時の
湯切れ、もしくは災禍による損傷を修復した、
円形の埋めがある個所です。
図録等で蓮弁をご覧いただくと、蓮弁に幾つも同様の
円形に埋められた個所をご確認いただけると思います。
菩薩が並び立つその姿はそれぞれ異なり、
表情、宝冠の差異、手、見ていて飽きない拓本です。
上段の菩薩と下段の須弥山世界の間にある、
中段の三界を表したとされる界線の間に
楼閣と共に顔をのぞかせるように描かれた仏や
菩薩の姿がなんとも可愛らしく、
のどかな気分になります。
手元に数種、東大寺展の図録がございますが、
すべての表紙を蓮弁の線刻画が飾っているのも
うなずけます。
蓮弁線刻部分の上部から下部までを拓本されており
本紙:縦176.5センチ 横72センチ
軸 :縦215センチ 横85.5センチ
と大きさがあり壮観です。
巨大な蓮弁ですので、線刻画の全容を個人で飾り
楽しむのは中々難しいものですが、この大きさなら
蓮弁の大きさを感じながら上部から下部へと構成される
蓮華蔵世界をお楽しみいただけると思います。
室内装飾としても、存在感がありながら
決して強いものではないので長くお楽しみいただけます。
拓本に経年によるヤケムラが多少ございますが、
濃い染み状になっている個所はなく、目立ちません。
採拓時に蓮弁表面の凹凸による小破れが確認できますが、
表装時に整えられており、鑑賞 保存の上で
問題のないものです。
木箱、たとう箱がございます。
ありがとうございました。 |
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