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鶏龍山窯は編笠手の刷毛目平盃です。元は小皿でしたが、ひしゃげたが故に手に持ちやすく、数奇者に盃に見立てられ伝わりました。側に小さなヒッツキがありますが親指でホールドでき、見た目より吞みやすい盃です。キュッと締まった小さな高台や見込の砂目跡、質の良いリッチなエンゴベなど、鶏龍山刷毛目の特質がふんだんに具わっております。
二箇所の本金直し、窯瑕がありますが釉の艶は極上、中でも特筆すべきは焼きが固くほとんど磁化している点です。焼きが甘いと白化粧にすぐに味が付きますが、以降どんどん「汚れ」になって参ります。その点、このくらい焼きが固いと味が付くまでに少し時間はかかりますが、杯を重ねて行くうちに得もいえぬ景色に育ちます。同様の編笠手平杯について、茶人の松谷和男氏がご自身の著書『芳庵常什』の中で書かれた文が奮っておりますのでここに引用させていただきます。
「薄作りで大きく歪んではいるが、洒脱な平盃である。<中略>大振りの盃には、なにもなみなみと酒をつぐことはない。夏の夕暮れどき、ほどよく満たしたこの盃を三本指で縁を摘むようにして取り上げ、ゆっくりと口に運ぶ。見込みの砂目跡が微かに煌めく。至福の時がやって来る。」
直径 110 - 130mm
高さ 27 - 50mm
桐箱付
朝鮮王朝時代前期
早々の御売約ありがとうございます。
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