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初めて大威徳明王と云う尊像を意識したのは東寺の講堂に於いてでしたが、さすがにその偉容かつ異様な容貌はいまも鮮烈に脳裏に焼き付いています。
大威徳明王は五大明王中の一尊で、阿弥陀如来が本体であるとも、文殊菩薩が変化した姿であるとも云われますが、梵名:ヤマーンタカは、意訳すると降閻魔尊、つまり閻魔(ヤマ)を降す神となり、軍神として怨敵降伏の意味合いでも祭られたもよう。その姿は六面(三面+三頭頂仏)六臂六脚で、多面多臂の尊像は多いが、六脚の仏尊は大威徳の際立った特徴と云えます。
本像の場合、六脚のうち前脚を半跏とする点(左右が逆)や頭光の火焔を三ヶ所に分けた表現(一ヶ所のみ現存)は東寺像に共通するものの、水牛の片脚を折りもう一方を前に出す点など幾つかの古像をミックスした感あり。水牛の頭、大威徳の腕先など寄せ木で作られた部分を全て欠損する点がまことに惜しまれますが、その尊顔を始めこの小像によくぞここまで!と思わせる精作と云って良いかと思われます。
時代を厳密に判定する事は困難であり、一般的に江戸時代と表記せざるを得ませんが、江戸期に入ると密教系の造像は極端に減るとの先学の指摘もあり、もう少し上げて考えたくなる要素は多分にあります。が時代に捕われず眺めれば、大威徳そのものの稀少性もあり、大いに評価して良い像かと思います。
◆ 像高:9,7cm(台座・火焔を含まず)。総高は後ほどアップします。
◎ ご売約となりました。ありがとうございました。 |
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