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過去に同手のデザインのうつわを扱ったことがあったので表記は薩摩龍門司といたしましたが、他の民窯の可能性もあると思います。いずれにしても九州系であろうと判断しています。
口縁に釉剥ぎがあるので最初から蓋をつけることを想定している焼き方のようです。もしくは
共蓋があったかもしれません。用途は葉茶壺だったんでしょうか、何にしても庶民の生活の道具で、縁の下の力持ちだったんでしょう。
長胴形のボディの肩あたりに鉄釉と緑釉とで見事な垂らし掛けの装飾が施されています。龍門司ではカラカラなどの酒器やそば猪口形のうつわによく使われる技法。まるでポロックやサムフランシスなどの抽象絵画を彷彿とさせる装飾ですが、本当に見事なアブストラクトを構成しています。この技法のルーツはやはり桃山~江戸初期の唐津、藤野川内窯でしょうか、彼の窯の製品は茶道具が多かったと思いますが、見事にこれはそのエッセンスを受け継いでいるように思います。
下地に掛けられた化粧白土には経年の味がしみ込み、これも粉引で云うところの雨漏りのような景色を見せてくれています。
日本民藝館にも龍門司のうつわが所蔵されています、柳さんを始め、民藝運動の人たちもこの素朴で、力強い装飾を愛したことでしょうね。生半の現代美術などは凌駕してしまうような力を持ったいい壺だと思います。
高さ40.0センチ 胴径34.0センチ 江戸時代後期頃
口縁や高台周りにわずかに釉薬の剥がれや、使用擦れなどは見られますが、無疵と云ってもいい抜群のコンディションです。
御売約ありがとうございます。
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