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坊間に流布する仏教版画は様々ありますが、
浄瑠璃寺の印仏の他にも伝来の確かな版画が
幾つかあります。
出品の仏教版画はその一つである、
高野山寂静院伝来の鎌倉時代の印仏です。
寂静院の元となる五坊の一つ経智坊に、源頼朝の庶子で
三代将軍実朝の兄にあたる貞暁により阿弥陀如来坐像が
建立され、胎内納入品として父頼朝の遺髪などとともに
伝わったものといわれています。
貞暁は北条政子より逃れる為、幼年時に京へ移り
出家しますが、実朝の死後、唯一の源氏嫡流として
将軍就任の野心を疑われ、左目を自ら抉り取り差出し
野心を否定したという伝説があります。
貞暁に関する消息文の紙背を用いて印捺されており、
一紙を半分に切断して印仏を連続して印捺されたものと、
出品の印仏のようにさらに小さく切断された紙に
一体ずつ印捺されたものがあります。
確かな伝来と、阿弥陀如来のかわいらしさの中にも
どこかしみじみとした情感のある姿が魅力といえる、
鎌倉時代の仏教美術遺品です。
古い額(ガラス装)に納まっていますが、
よく似合っていると思います。
(台紙に貼られていませんので、ガラスを外さず
撮影いたしました。ご了承ください。)
参考画像:版と型の日本美術
町田市立国際版画美術館 1997
本紙:縦 約8センチ 横 約4センチ
額:縦25センチ 横13センチ
ありがとうございました。 |
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