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塔を崇める信仰は、アショーカ王が建立したルンビニの地にある石柱がそもそもの始まりのようです。それは紀元前、まだギリシャから偶像を彫刻したものが伝わる以前のはなしで、仏像の概念がまったくない頃のことです。
そこから数百年のときを経て、インドのグプタ朝時代に作られたのがこの石塔、ストゥーパです。マトゥーラの石造のような赤黒い石質、四面に仏陀が彫り込まれていますね。上部の相輪部分は折れていて形は詳細にはわからないのですが、もっと高いものだったのでしょう。下部ももっと高い石塔の一部だったのかもしれません。
彫られている仏陀は、エキゾチックな香りはするものの、きわめて我が国のせん仏に似ています。せん仏とは白鳳時代に寺院の壁面の荘厳のためにたくさん作られたもので、奈良の橘寺や南法華寺、あるいは山田寺などのものが有名です。こちらのストゥーパが謂わば先祖ということになるでしょうか。
シルクロードを経てギリシャ彫刻の影響を受け、ガンダーラ美術が花開いた時代、インドにも伝わったそれは彼の地らしい発展を遂げていきます。
仏教美術研究の大家、瓦礫洞山人、石田茂作さんは今さら説明するまでもない有名人ですが、石田さんの集めておられたもののなかに同手品がありましたので、参考にご覧ください。「瓦礫洞古玩録」と題する石田さんの古稀を記念して出版されたもので、この本さえ今は貴重なものとなってしまいました。
日本の仏教美術のルーツ、美しい佇まいを見せるストゥーパを座辺の友としてお愉しみください。
高さ19.8センチ 胴径12.3センチ
インドグプタ朝 4~6世紀
画像でご覧頂けるように底面や側面にニュウがあります。また削げや欠損はあちこちにありますが、発掘ものゆえ致し方ないところと思います。
御売約ありがとうございます。
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