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決して派手ではないけれど気になる存在であり続ける漆絵の世界。特に高級な金銀をぜいたくに使った蒔絵とは違う、至って素朴なものではありますが、それだけに座辺で緊張感を解く癒しの存在でもあるのでしょう。
この世界ではやはり書画や陶磁器が王道ではありましょうが、民藝理論の展開と共にこうした民衆と共にある道具たちにもスポットが当たってもう久しく、日本民藝館やサントリー美術館などに素晴らしいコレクションがあるのはよく知られていますね。天童の出羽桜美術館にも少ないながら佳品が並んでいるのはマニアックな方ならおわかりかと思います。
こちらは都近辺から滋賀の朽木辺りの産と想像しています。画面に大胆に流水と水辺に咲く沢潟を描いています。その筆致は手慣れていて琳派の作風を踏襲しているようです。
裏面は弁柄漆でこれまた大胆に塗られ、往時はさぞかしハレの日を彩ったであろうことが容易に想像出来ますね。おそらく絵替わりで十客単位で伝世していたのではないかと思います。
弊店ではずっとご紹介し続けているものですが、この大胆な沢潟と云うのは初めて買うことが出来たものでうれしく思っていました。
古民藝という範疇だけでなく、一幅の絵画を鑑賞するような心持で眺めて頂ければと思います。
参考画像は大阪の古美術商、石苔堂の瀬良陽介氏が発行された、漆好きにはお馴染みの「盆百選」です。同じ文様ではないのですが、流水や草の描き方に共通するものがあり産地の想像の一助になればと思い掲載しております。ちなみに上方系統で江戸時代の前期から中期頃ではないかと述べておられます。
直径38.5~39.2センチ
江戸時代後期頃と考えます。
画像でご覧頂けるように割れが発生した箇所を古い時代に漆で補修しています。また全体的に擦れ、剥落などありますが、この手としてはコンディションはよいと思います。
御売約ありがとうございます。 |
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