|
漆絵の魅力を伝えて早二十数年、相も変わらず地味な世界ではあるのですが、それでもお好きでなファンの方々がおられて、なんとか自分の紹介するものもお渡しできました。
漆絵の優品と云えば何と言っても岩手県の北端、青森との県境にある二戸村の浄法寺がイメージされますね。しかし漆と原材料の木は全国いたるところに存在していたわけですから、東北ではない地域の漆絵と云うのも当然のことあるわけです。
滋賀の朽木や能登の輪島、奈良の吉野に周防の大内といろいろご紹介してきたのですが、今日はこちら。
一見黄色と黒の切り紙を置いて絵を描いたように見えますが、よく見ると細い筆で輪郭線を表現しています。豪快に伸びた草のもとに鳥が一羽描かれているようです。細い線なのでかなり擦れてしまってはいますが、瓜のような果実や葉もあってなかなかにぎやかな構成。
しかしこれを最初に見た時の印象は「あっ!マチス!」というもの。なるほど晩年は切り紙を用いた技法でも知られるアンリ・マチスの絵画のようでした。
さて漆絵のご紹介でいつも問題になるのは産地、これもいろいろと考えましたが九州のものであろうと結論を出しました。
素材は栗を用いて、この黄色と黒の色の構成を多用し、また流暢な絵付けというより幼児が折り紙を切ったり貼ったりというような素朴な絵付けの感覚。これらは過去扱った九州で出てきた漆絵の木皿や盆にありました。
熊本と大分の県境辺り菊地や矢部といった辺りでも漆器生産が盛んに行われていたことがあり、その辺の産であろうと見当を付けています。
裏面は弁柄漆の赤が擦れて赤黒い迫力のある質感、削り出された三つ脚も素朴でいい味わいに変化しています。
もっともっとこの漆絵ファンが増えて下さることを願ってやみません。
口径25.1~26.7 高さ5.7~6.0センチ
江戸時代頃
割れが発生しているところがありますが現状この状態で安定しています。また全体的に擦れ、漆の剥落などありますが、この手のものでは許容範囲と思います。
御売約ありがとうございます。 |
|