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唐津の酒器というのは古陶磁好き、お酒好きの人たちにとって特別な存在でしょうね。根来の折敷に備前の芋の子、織部の向付を置いたらあとは斑唐津の筒で一杯、なんてのが昔の古陶磁好きの究極の膳のしつらえだったでしょうか。
しかし今こうしてそれらのラインナップで並べたら、ギンギンキラキラ派手過ぎてちょっとえげつないことになっちゃうでしょうね。一つ一つの個性が強すぎて組み合わせとしてもちょっとキツい。それにこれだけ揃えると高級車数台分になるでしょうからね。ちょっと気のおけない晩酌なんてものには程遠い。
だからそこにはちょっと変化球というか肩の力がフッと抜けたものがやっぱりふさわしいのじゃないかと思うのです。
この酒盃は王道の一品では決してないのですが、なかなかに侮りがたい奴だと思うのです。
形はよく見る山盃と呼ばれる自然な碗成り、そして糸切り底。しかし普通は土見せになるところ総釉掛けで仕上げるというのはなかなか珍しいのじゃないでしょうか。そしてその釉薬も長石成分が多く、裾際のところには梅花皮のような溜まりが出来ているのが魅力。素地が赤い土なので全体が枇杷色に上がっていてとても好ましい膚合いです。
浅い山盃も多いなか、ちょっと深いのもうれしいポイント、探してもちょっと出てこない得難い一品と思います。
これから寒い季節になるとこんな温かみのある膚の酒器がやはりしっくりとくるのじゃないでしょうか。貫入に入った味も更につややかに育っていくと、また一層お酒が愉しいものになると思いますよ。
口径6.9~7.1 高さ4.6センチ
桃山~江戸時代初期
新しいものですがきれいな木目の杉箱に収められています。更紗の包布、木綿の風呂敷が添っています。
口縁に金繕いが1か所、硬いものに当てたようなごく小さな横方向のニュウが1か所ありました。画像でご確認ください。
画像にある盆や徳利などは付属しませんのでご了承ください。
御売約ありがとうございます。 |
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