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二月堂焼経について、『特別陳列 東大寺 二月堂とお水取り』(奈良博)所載の二月堂焼経の解説文から一部引用いたします。
「寛文七年(1667)二月十三日に二月堂が焼亡した際、焼け跡から発見された『華厳経』(六十巻本)である。焼損があるために「二月堂焼経」と呼ばれて名高い。この華厳経は、修二会の内の実忠忌(旧暦二月五日)の講問に用いられたものだと考えられ、現存する奈良時代唯一の紺紙銀字経である。通常、銀は酸化して黒く変色するが、この焼経の銀は書写された当初そのままのように白く輝き、比類ない清澄な美しさを感じさせる。文字も謹厳整斉でゆるみがなく、奈良時代中期のすぐれた写経生の手になるものであろう。」
「二月堂焼経」の銀字は、実際には、熱の為か、やや金色がかった発色であったり、時に黒く変色し、経文が読みづらかったり、水を被った為、水滴の跡があったり等々、状態は千差万別です。そのような中、本一葉は、ご覧のとおり、そのほとんどを焼失しつつも、焼亡を免れた経文は、上記解説文のとおり、「白く輝き、比類ない清澄な美しさ」をみせるものです。
経文は『大方廣仏華厳経巻第三十九』離世間品第三十三之四からです。
爲菩薩摩訶薩第十寶住成阿耨多羅三「藐」
三菩提。若菩薩摩訶薩。安住此「法。則得一切」
諸佛阿耨多羅三藐三菩提「大智慧寶佛子。」
菩薩摩訶薩。有十種發金剛「心莊嚴大乘。何」
等爲十。所謂菩薩摩訶薩。作如是念。「一切諸」
軸装は、小さな経切のプラチナ色の二十文字程が映えるよう、小ぶりで抑えた表装としました。濃紺の古い高山裂を背景に、金襴の細い筋を本紙の周りと上下に、控えめなアクセントとして入れました。暗い裏打紙上の赤茶の焼痕に、暗闇の中、二月堂の欄干で勢いよく振られ、燃え盛るお松明の炎をみていただければ幸いです。
火災、水難等々をくぐり抜け、小さなちいさな断片となるも大切に受け継がれてきた、ある意味「二月堂焼経」らしい「二月堂焼経」と思われます。
太巻 本紙:24.5 x 10.4 cm 軸:72 x 17 cm
たくさんのお問い合わせ、どうもありがとうございました。
ご売約と相なりました。
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