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能野(よきの)のやきものとは鹿児島県は種子島で江戸時代中期から明治に掛けて焼かれたもので、素朴な焼き締め陶器として一部の民窯マニアに好まれているものです。一度明治三十五年に廃窯されてしまったようですが、現在ではいくつかの窯元が再興されて陶煙を上げ続けておられるようですね。
通常見かける能野はいかにも焼き締めらしく、赤い膚で備前などとよく似ているものです。しかしこれはまた随分とつやつやとしてイメージが違いますね。施釉してあるのかと思うほどですがやはりこれは自然釉のようです。ちょうど高麗の焼締めがこのようなぴかぴかとした膚合いに上がることがありますが、これもしっかりと高温で、しかも焚口近くに置かれたためにこのように灰を被ってそれがよく融けているのだと思います。鉄分の多い土なのでもう少し温度が高かったらヘタってしまうところだったのではないでしょうか。
口元に沈線を施すのはよく見かけるもの、能野らしいデザインですね。生活の中の雑器であったろうと思いますが、今は花生に見立ててお使い頂くのが愉しいですね。
手取りやサイズも頃合いがよく重宝する花生け、早起きした朝の散歩の途中で見つけた野花を投げ入れてみてください。
高さ14.2センチ 胴径11.3センチ
江戸末期~明治頃
厳密に云えば接地部分に薄い削げが見られますが、焼き締め陶の性格としてこのレベルでは疵の範疇に入れなくともよいかと思います。口縁部のひっつきや厚く溜まった釉薬が剥落した部分も景色と云えそうです。つまり無疵申し上げてよいレベルです。
水を張って一昼夜おいてみましたが漏れはありませんでした。
御売約ありがとうございます。
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