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中国の唐時代に製作された人形です。この姿形、表情、そして白釉薬のタイプはとても珍しいです。最初、本作を遠目で見た時、ベールをかぶった聖母マリアかなと思い、「キリスト美術ですか?」と聞いてしまいました。近づいてみると白釉の唐時代の人形でした。手に何か持っている様子の孔があるので、通常、ここに青銅製の槍が入ります。やはり普通に考えて槍を持つ武人だと思うんですが、あまりにも優しく穏やかな笑顔で、本当に戦えるのかな?と心配になります。
でも、私はこのお顔、優美な立ち姿が大好きです。加彩であればありふれすぎていて買わなかったでしょうが、白釉作品はなかなか珍しいのです。直しもありません。特別に誂えられた台座もあります。相当古くに日本に招来された作品で、古格を感じます。飛行機の無い時代、大切に懐中して何日間もかけて、はるばる中国大陸から日本へ持って来たのでしょう。
なんでこんなに優しく微笑みかけてくれるのだろう。なんでこんなに小さなサイズなのに、この表現ができるんだろう。生きているように感じます。モデルは実在したと思います。陶工は、大好きなあの子、大切な親友、最愛の我が子、或は眼前で照れくさそうに微笑むモデルの若き兵士の顔を思い浮かべて製作したと思います。
現代の中国はダイナミックすぎて、激しすぎて大変に思いますが、かつての中国はこのように豊かで美しく、詩的で悠久のロマンを有した素晴らしい世界を代表する文化大国でした。「これこそが本当の中国だ。これこそが本当の中国人なのだ」と感じます。古き良き歴史のロマンに思いを馳せて、美しい時代を懐古しています。心から対話できる深い作品です。彼と向き合って、当時の中国の様子を教えてもらっています。
産地:中国
時代:唐時代
状態:無傷
寸法:高さ約18.8cm(台含む)
早々の御売約ありがとうございます |
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