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古民藝と呼ばれるジャンルの中でもとりわけ好きなのがこの木のものであるわけなんですが、そう思われる方がすこぶる多いのも我々の脳裏に細胞レベルで擦り込まれているからなんでしょうか。
古代から生活の基本となる材料は木であったでしょう。動物の角や骨、加工しやすい石、など様々な材はあったでしょうけれど、生活の基本となる住居は木材ですし、ドングリや栗の実などの貴重な食料も木がもたらしてくれるものでしたからね。原始の生活からつい近年まで木は常に身近にあり、何時の時代の人々の座辺にはこんな味のそれらがコロがっていたでしょうね。
主に囲炉裏端や厨房の片隅に置かれていたと思われる棚、背板の部分に穴が穿たれているのは掛けて使用していたかもしれません。毎日使う道具や簡単な食器を収めておく棚だったでしょう。煤や手脂など様々に酷使され使われてきた味が、現代の我々にとって郷愁を呼ぶものになっています。
節穴がある板を使ったりしていますが、あまりに身近な棚だったのでそんなに気にしていないのでしょう。そんなところがまたそそるわけですね。
そば猪口棚と呼んで昔から愛用者が多いのですが、意外とシンプルなこんなものは少ないように思います。多くは下段に引出など付けているのですが、これはこれでシンプルイズベストと云わんばかりの潔さです。
白洲次郎さんと正子さんの疎開先で、そのまま終生住み続けた町田の武相荘、そこはエスタブリッシュメントの住み家でありながら、実にいにしえの庶民の暮らしぶりを上手く取り入れた見事な空間でありました。
そんな田舎家暮らしは具体的にちょっとむずかしいとは思いますが、現代の無機質な空間であってもそこにひとつこんな木のものがあれば、たちまち温かなともしびを感じることが出来るのではないでしょうか。
巾36.5センチ 高さ30.0センチ 奥行21.8センチ
江戸時代~明治頃
棚板の割れ、釘によって天板が盛り上がってしまっている部分などあります。その他擦れや打痕などいろいろと経年使用による変化がありますがこちらは味のうちでしょう。お使い頂くのに支障は特にありません。
画像にある陶磁器は付属いたしませんのでご了承下さい。
御売約ありがとうございます。 |
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