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民間信仰の形態は実に様々で各地域で多様な展開を見せるものですね。多くは恵比寿大黒の神さまが神棚に祀られて、また像ではなくともお札を厨子に納めて身近な場所に祀ったものが時々出てくることがあります。
このお狐さまは小さくて可愛らしいサイズ、おそらくはごく小さな共同体か私的な小さな祠で祀られていたのでしょう。全体に煤が被っていることから囲炉裏端の神棚のようなところにおられたのだと思います。
稲荷伸はその名の通り稲の神、農耕の神さまでありそれは日々のくらしそのものを支える根幹であるところから全国的に広く信仰されました。京都の伏見稲荷大社はその総元締めのような存在なのはよく知られています。後には広く商売繁盛や交通安全、芸能など産業全体の神さまになっていくようですね。
これほど広く信仰されたにもかかわらず、意外と恵比寿大黒のような木彫が少ないのは何故なのか?それは神さまというものはもともと御姿が見えないもの、後には貴族の装束で表わされますがそれは庶民が理解するにはハードルが高かったのかも、また造像も難しかったので刷り物で一緒にお使いの狐たちも摺って表現したからかもしれないと想像しています。
蔵鍵を咥えた吽形、宝珠を咥えた阿形で一対、狛犬のように対になっているものです。威厳のあるお顔をした狐が多いのですが、これは煤も被っていることもあってとてもやさしいお顔立ちに見えますね。どちらかと云えば犬のようにも見えて動物好きの方が好みそうな造形になっています。
いつも民間信仰のものをお勧めするときに云っていますが、こうしたお像はいまやコレクターさんからしか出なくなってきています。次の世代のコレクターさんにバトンタッチするお手伝いが出来たら私自身も嬉しく、また愛蔵してくださる方と出会えれば狐たちも喜んでくれるように思っています。
高さ12.3センチ(台座込み)
江戸時代頃
耳の部分が傷んでいたり、吽形は咥えた鍵が折れてしまっています。また阿形は台座とジョイントする木釘は折れてしまっているので乗せているだけの状態、そして尻尾の部分は一度外れたものを接着しています。もともと取れたものを和紙で貼り付けていたようです。虫食いによる傷みはありません。
御売約ありがとうございます。
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