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オリジナルの彩色が美しい奈良元興寺伝来の千体仏です。ほっそりと上品な佇まいで、像高7.5センチ程です。
頭部は、中高面長の顔立ちに、鼻と口の表現を控えめに刻み、細長く垂下する耳朶を彫り出しています。右手は掌を表に向けて垂下し、その手の平には五本の細い指の表現が確認できます。左手は曲げて掌に宝珠をのせます。
腹部には小孔が穿たれ、同様の円孔を持つ元興寺極楽坊伝来地蔵菩薩立像板仏について「柱にでも竹釘で打ちつけられた時のものか」(*1)とあることからも、本像の円孔も同様のものと思われます。
小さなおみ足は、元興寺千体仏によく見られる、マッチ棒の頭のようにこんもりとして、「ハ」の字に開き、蓮華を象ったものかと思われる台座に立っています。
彩色は「像全体に白色顔料を下塗りし」(*2)部分的に赤や緑など点じたものですが、その彩色は、胸前や窪んだ部分に、時代を表すかのように良い感じに残っています。剥離した部分も、光があたると、時代を経た檜特有の輝きを放ちます。
状態は、台座下から割れが入っていますが、背面をみると台座部分で止まっており、これ以上広がる様子はありません。
元興寺の総合収蔵庫に以前は、ずらりと千体仏が並んでいたのですが、再訪した折、その数はだいぶ減っていましたが、本千体仏と、姿、寸法、彩色など瓜二つのものが二体陳列されておりました。
僅かにのこる彩色ですが、心なしか、辺りに華やいだ雰囲気をもたらすようです。鎌倉時代
*1『瓦礫洞古玩録』石田茂作
*2『日本仏教民俗基礎資料集成 元興寺極楽坊』
どうもありがとうございました |
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