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神々しさが感じられる古い木彫地蔵菩薩立像です。
涼やかな目元、小さく上品な口元、ふっくらとした頬、生き仏のようで、荘厳な空気を醸し出します。
地蔵菩薩は「菩薩でありながら一般僧侶の姿をして迷の世界六道を尋ね廻って、苦の衆生の救済を担当しておられるという」(*1)ありがたく、身近な仏様です。
「日本では、まるで生きた姿のごとき「美」があってこそ仏像なのです。だから各地の仏像が決してステレオタイプで造られてはいないのです。こんなことは、インドでも中国、朝鮮、東南アジアでもありえないことです。・・・日本だけに仏師という仏像製作専門の僧がおりました。この仏師という言葉は、中国にも朝鮮にもありません。あちらでは単なる工人が造ったので、皆同じ姿をしているのです」(*2)
同じ地蔵菩薩であっても、皆それぞれ、姿、持物、表情が異なります。名のある地蔵菩薩は、画像をみれば、ああ何処何処のお寺のお地蔵さまだと判るほど個性があります。このお地蔵様も、生身の高僧のような相貌を呈し、その慈悲の眼差しに手をあわせたくなります。
状態はご覧のとおりで、大きな補修はございませんが、若干の補修と漆台の製作を仏師の方にお願いいたしました。
最初に目についたのは、繊細な髪際線の美しさと、瞼の、玉眼までの、薄さでした。それは彫技の秀抜さですが、仏の道を歩む僧侶としても、この仏師は悟りを開かれたのではと思われます。
時代は、鎌倉時代と考えております。
像高:52cm 総高:59cm
*1『仏教美術の基本』石田茂作 東京美術
*2『日本の美仏(みほとけ)50選』田中英道 育鵬社
どうもありがとうございました。
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