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首を左に気持ちかしげ、目尻眉尻をやや下げ、ふっくらとした唇をすこーし開き、柔らかな笑みを浮かべる、可憐な銅造如来坐像です。
上から見ていくと、強い髪際線から大きく張り出す頭髪部、上の肉髻は豊かに盛り上がります。頸部ははっきりせず、なだらかな肩から胴体へするりと続き、結跏趺坐しているであろう脚部もはっきりしません。それでいて蓮台は、ハスの蕾が咲き始めた頃の表現と思われ、高さがあり、ふくよかな花びらが重なり合い、その上には蕊の表現と思われる細かな縦線まで見えます。このように一鋳された全体を見ると、高さが感じられ、すらりとしたフォルムです。
時代は、個性的な相貌や全体のフォルムなどから、室町時代になり懸仏が報賽品として量産される以前、鎌倉から南北朝にかけての頃の作かと考えます。
状態は、鋳造時の湯切れと思われる欠損部が、左腰と右後頭部にあります。また左側の造りは、右側に比べやや弱く、蓮台の蕊の表現も薄く、左手の表現もはっきりしません。その左手には、小さな球状のものが見えるので、もしかすると薬壺の表現で、薬師如来の可能性もあるかもしれません。
その他、裏面下部のホゾ先が半分欠失しています。以上、鋳造時および鏡板から離れた頃のものと思われ、近年の痛々しいキズのようなものはありません。
限りなくやさしい笑みを浮かべる仏様です。辺りの空気がなごむようです。
像高:7 cm 総高:8.4 cm
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