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古陶磁のなかで唐津と云うものの人気ぶりはすごいものがありますね。たしかに使えば使うほどいい味わいに成長していく、いわゆる親水性が使う愉しみを増幅してくれますし、茶の世界でもやかましくいわれるのも納得です。
さてそんな茶陶も素晴らしいものですが、民需のうつわたちも、もっと評価していこうとする動きがここ数年で興ってきているように思います。地元やあるいは民藝という評価基準ではかなり昔から賞玩することはあったわけですが、再度見直していこうと企画展が催されたりしています。刷毛目や流し掛け、飛鉋などの技法で華やかな装飾を施したり、古唐津にはなかった緑釉を多用するなど、武雄系の窯で作られたそれらは「古武雄」という新しい言葉で呼ばれたりしていますね。
こちらは単純な碗ですが、それだけに一層身近で使いやすいものと思います。
唐津の中では後発の民需の窯、現在の佐賀県嬉野市にあった内野山窯の製品であるこちら、外側を緑釉、内側を長石釉で覆ったツートーンの碗。ひっつきで歪んでしまったので物原に捨てられたものと思いますが、繕って使いやすいようにしてあります。
高台は土見せで、唐津のいい土味が愉しめます。轆轤の回転が蹴轆轤特有の左回転でチリチリとした皺も見えていい風情。
そして発掘ものとは云え、取り上げられたのは見込みがキレイだったからでしょうね。藁灰成分が青白く流れ、鉄分が降ったところも景色の一つと思えるものです。
毎日私たちはお茶を飲んだり、コーヒーやお酒を呑んだりするわけですが、そんな気のおけない日常茶飯事にこそこんなうつわを使いたいものだなあと思わせるもの、味のいい曲げ物に仕込んで民藝茶箱なんてのも愉しいアイデアかもしれませんね。
口径9.5~11.1センチ 高さ6.1~6.4センチ
江戸時代前期~中期頃
口縁に1.5センチほどの金繕いとその部分からニュウ、他に微細な繕いが3か所ほどありました。また上記にあるように窯中で隣の器物が倒れて歪み、それを取った痕がありました。
無疵ではありませんが、ご使用には特に支障のないもので、歪みも指が掛かってつかみやすいとも云えるので、この際は古陶磁の特色と贔屓目に見てあげてください。
御売約ありがとうございます。 |
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