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浄法寺という言葉を知ったのはもうずいぶん昔のことでした。漆のうの字も知らない自分に、こんな面白い世界があると教えて頂いたのはあるお客様でした。
それまで陶磁器一辺倒であったのが、それこそ目から鱗がゴソっと落ちるようにどんどんその世界にのめり込んでいったのを覚えています。そしてそれは今も変わらず、好ましい物を見つけるとお尻の辺りがチリチリと燃え出すような感覚に襲われます。
これは漆絵もない至って地味なものではありましたが、(とにかく煤だらけのホコリまみれであまり色も見えないような感じであったので、余計そう見えたのではありますが・・)でもきっといい味のはず!と思い込んで買ったのでありました。
はたして煤を掃い、きれいに拭いてやったらこの色、この味!思わず嬉しくなってしまったのです。
東北出張の折、岩手で買ったもので、ハッキリとは教えてもらえないのですがやはり岩手で出たものということでした。産地もおよそ近い所で浄法寺と推定しそのように表記致しました。
小さめの盆で、弁柄漆の赤がしっとりと落ち着いて、そこに染みた味がなんとも云えずいい風情。素地の木目が浮き出てそこに塗りっぱなしの漆の刷毛痕がクロスオーバーして一服の抽象画のようです。
立派な蒔絵のようにお蔵の中で大切にされたものと違い、今まで数知れぬ兄弟たちが廃棄の運命に遭ってきたことでしょう。でも残されてなおかつ状態のいいこれらは本当に運の強いモノたち、拾い上げて今またお茶の盆など大切に使ってあげれば活きてくるのではないでしょうか。
A 直径22.5~23.8センチ 高さ2.7センチ
B 直径21.9~22.9センチ 高さ2.6センチ
経年変化によって収縮がおきてやや楕円形になっています。反りなどはありませんのでかたつきなどはありません。
江戸時代頃
Aの口縁部に僅かに共色直しがあるようです。ほとんど気になるレベルではないかと思います。
御売約ありがとうございます。 |
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