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やさしい雰囲気のある、花を誘う土師器の小壷です。
大きな蜜柑に、立ち上がり2センチの口頸部がついた程の大きさで、両掌の自然なカーヴに心地よく収まります。
この小さな土器には、姿にも肌にも、見所が幾つかあります。
口縁は、輪花のように浅く波打ち、また水中に一時あったものか、肌は洗われて柔らかく、土の中に含まれている極小の小石などがぷつぷつと顔をのぞかせています。
紐状にした粘土を巻いて積み上げて作った制作過程や、口頸内側と、底の整形に篦をつかったかと思われる様子が見て取れます。
チャームポイントの縦に太く一筋入る黒い焦げは、右と左で、くっきりとした色分けと、霞がかかったような柔らかな変化と、異なった表情を見せます。
状態につきましては、口縁の柔らかな波のいくつかはホツレによるものですが、経年により、鋭さはありません。また底は多面体のようで、探せば、頸を傾げずに立つ部分もあるのですが、普通に置くと傾きます。それでも小さな紙を折って挿むだけでまっすぐに立ちます。
このまま眺められても、早春のような味わいのある土器ですが、野の花を添えて日々お楽しみ頂くのにちょうど良いかと思われます。花を生けるには、土器は落しが必要ですが、口が大きいので、その辺りも楽です。
口径:7.5cm 高さ:8.5cm 箱なし |
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