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武骨でなんの愛想もない不器用なものだけれど、温かく寄り添うような人になりたいと思うし、そんなうつわが欲しい。特にこれから日を追うごとに冷たい風が吹き、身体もそして感情も凍えてしまうような日々がやってくると想うと猶更のことじゃないでしょうか。
堅手の酒盃ひとつ、地味な灰色上がりの石ころのような存在。路傍に転がっているような派手さの欠片もない盃ですが、コロンとしたお饅頭のようなかたちと、煙でも入ったような黒ずみの窯変、侘びた風情でこれからの季節にぴったりのようで気に入ってしまいました。
端反った素直な造形、唇のあたりもとてもスムーズです。畳付を削り出さないベタ高台、その部分は火抜けによって素地の土が淡く見えています。周りには月に叢雲といった塩梅の窯変、地味ながら均一の工業製品のようなものとはまったく違う変化が愉しい。
見込みには円くニュウのように見える部分がありますが、これは反対側に抜けていないので釉層に入った地貫入、アクセントのようなものと勝手にえこひいきしています。
意外にどっしりとした持ち重りのするもの、でも素地の厚さゆえですし、重心はあくまでも高台にあるので気持ちのいい持ち重りということですね。
新しいものですが桐箱に収められて、酒舗に出向いての一献もまた格別。
木枯らしが吹きすさぶなかようやく店にたどり着いたら、おもむろにこいつを取り出し熱いのを一杯、寒いからこその至福でしょうね。
口径9.0センチ 高さ3.9~4.3センチ
朝鮮時代後期
桐箱に収められています。
上記にあるように地貫入はありますがこれは疵の範疇に入らないものと思います。
御売約ありがとうございます。 |
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