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ピンポン球ほどのおおきさの、清楚で、かわいらしい、初期伊万里の盃です。
碗なりは、低く控え目な高台に続く高台脇から、すぐにふくらみを持ち始め、そのままやわらかいラインで立ち上がり、口縁ではかすかに内側に入り、薄くきれいな口造りとなっています。冷酒がおいしいただけそうな姿です。
白磁の肌は、釉薬のかかり具合によってはやや青緑がかって見えます。
伊万里に魅せられたひとりの青年が窯跡を歩き回り、足元にキズだらけの小碗をみつけました。口縁には欠け、甘手の肌には貫入、ひび、引っ付き、そして高台も一部欠けていましたが、それでも初期伊万里特有の青みのある美しい肌と、小碗の柔らかいフォルムと、口造りの薄さに、陶工の姿まで見えるおもいがし、歓喜して拾い上げました。その後、彼は時間をかけ、愉しみつつ、引っ付きを擦り落し、口造りの欠けに金繕いを施しました。時は流れ、故あって人の手に、そしてまた次の人の手に・・いつの間にか好いお箱に収まることとなりました。
以上、この盃を見て感じたおはなしです。
状態は、画像にてよくご確認ください。口縁はほぼ四角く、欠け、ニュウ、ひびなど多数あります。引っ付きを擦り落した箇所は、外側は赤丸をつけてあります。内側は印をつけていませんが、何カ所もあります。高台も、砂目積をはがした時のものか、一カ所欠けています。
ざっと四百年ほど前に生れ、一度物原行きとなったものが、今ここにある不思議におもいはめぐらせ、冷たい御酒を愉しんでいただけたらと思います。
口径4.5〜5.5cm 高さ3.6〜3.9cm
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