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訶梨帝母(かりていも)とは鬼子母神のことで梵語のハーリーティーの音訳に漢字を充てたものです。仏の教えに帰依するまでは人の子を捕って喰らう恐ろしい悪神でしたが、釈迦の導きにより仏法の守護神に変わり、子供と安産の守り神になりました。
日本では密教の盛行により、上流貴族の間で安産の為の訶梨帝母法が修せられたりして信仰が深まったようです。近世においては鬼子母神を祀った神社もあちこちに存在して善男善女の参詣でにぎわっていますね。
こちらの仏画は庶民信仰の対象と云うよりは前記の訶梨帝母法の修法の時に掛けられて使用されたのではないでしょうか。
絵絹の中央に主題である冒し難い品格を持ったお顔はなかなかに古様、手には吉祥果を持ち、その周りには子供たちが遊んでいます。そう彼女は500人の子だくさんなのですね。くっきりと残っているわけではないのですが、その衣裳には切金風の金泥の文様が入っていてこれも美しいポイント、子供たちは唐子のような姿でこちらは主題に比較してやや簡略化が見られます。でもそれも素朴で愛らしいイメージですね。
絵絹に若干の傷みや胡粉の剥落が見られますが、まずまずのコンディションでしょうか。
一番有名な訶梨帝母像は京都の醍醐寺の国宝であるそれですが、何しろ一般的な庶民の仏というわけではないのでかなり特殊な例になります。仏画の類はかなり数は出てくるものでしょうが、この像容はかなり珍しいものと思います。
私自身も初めて買うことができてとても嬉しい仕入れでした。
表具は江戸時代頃のものかと思いますが、主題にピタリと添ったものですね。一文字や風帯には蓮の花びらが散華されている様子を金襴で、中廻しも落ち着いた色調です。軸端は蓮の花を彫金した金属製のもの、透き漆で仕上げた共箱も嬉しいお仕立てになっています。
縦149センチ 横幅(軸端を含まず)55.0センチ
絹本 軸装
室町時代頃
僅かに折れ、擦れ、剥落、表具の一部に切れが見られますが、総じて時代物の仏画としてはとてもいいコンディションであると思います。
御売約ありがとうございます。 |
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